第64回定例会の様子(県立がんセンター新潟病院)      戻る

会に先立ち、施設見学がありました、緊急の一時ペーシングが入り見学が一時停止されましたが、放射線科のご好意により、検査終了後再度見学させていただきました。
今回の”フレッシャーズセミナー”は、「CT Angiographyの基礎」を新潟大学医歯学総合病院の能登さんにレクチャーしていただきました。
CTA成功の鍵を「物理特性」「造影コントラスト」「3次元処理」に分けて、わかりやすく解説されてました。スライドはホームページ上にあります。
会員発表は寺澤さん、富永さんの座長で、4題の発表がありました。
施設紹介、ASO治療時の工夫、血管内治療デバイスの紹介、術中透視装置の線量評価と多岐に亘り、熱心に討議されました。
当日は、梅雨入り直前で、非常に蒸し暑い日でしたが、
114名の参加がありました。ありがとうございました。
会場は、参加者の熱気と東日本大震災のよる節電のため、
熱く盛り上がっていました。
今回、会場入り口で東日本大震災の義援金募金を行いました。
「8196円」の義援金が集まりました、日本放射線技師会を通じて被災地へ送ります。ご協力をいただいた方、ありがとうございました。
特別講演座長は、がんセンター新潟病院、小野塚技師長にお願いいたしました。
お忙しい中、ありがとうございました。
特別講演「大腸癌肝転移に対する肝動注化学療法の現況」
県立がんセンター新潟病院 診療部長 関裕史先生

非常にわかりやすい講演で、日本のIVR技術の高さがよく理解できました。以下に講演の要約を載せさせていただきます。
 要約

 2000年以前の動注療法と全身化学療法の比較試験では、肝病変に対しては肝動注治療が優れているが、生存率の改善を証明することはできませんでした。生存率もほぼ同じで、手をかける肝動注よりも全身化学療法でよいのでは ないかという考え方が出てきたのと、その後、分子標的薬の登場で全身化学療法が標準治療の立場を確立してきま した。
 2000年代に行われた比較試験では、肝動注治療がカテーテルトラブルの少ない適切な技術によって高い実効性を持 って実施されれば生存率の改善に寄与するということを実証した試験が発表されました。また、肝臓以外の転移を制御する効果は動注治療が弱いという弱点も明らかにしました
結局、全身化学療法と肝動注治療のどっちがよいのかという論争はいまだに決着はついていません。
 肝動注治療で日本は欧米に比べて非常に良好な成績を出しています。その理由は日本ではIVR手技を用いたシステム留置技術 が発達しており技術面では日本が非常にリードしています。
 IVR技術では、側孔付カテーテル留置法の開発があげられます。「側孔式カテーテル留置法」は長く安定的に留 置できるということで 「側孔式カテーテル留置法」はシステムトラブルが非常に少ない留置法であるということ が分かりました。また、「コイルアンカー」、「マイクロバルーン」によるコイル塞栓術で肝動脈を一本化する技 術の発達もあげられます。
 薬剤分布の管理技術も発達しており、リザーバ造影CT検査があります。これは側副血行路の確認に役立ちます。 側副血行路の発達は動注治療の効果を低下させます。これらをIVR手技を用いてNBCAとリピヨドールを混合 し塞栓するという技術も発達してきました
血管相とかん流相を撮影するデユアルフェイズ CTAはカテーテルの逸脱、塞栓と薬剤分布の二つの評価に役立つ検査 です。つまり適切なシステム留置技術が有効な肝動注治療のために非常に重要です。
 最前線での肝動注治療では、全身化学療法と肝動注治療の併用療法が盛んに行われています。全身化学療法と肝動注治療の弱点をお互いに補い、生存期間を延ばすことが考えられてきました。全身化学療法と肝動注治療を同時に併用す る方法、順序立てて使用する方法などが考えられています。それぞれの方法で生存期間の大きな延長が見られました。肝動注治療法に分子標的薬を使用する方法、切除不能な肝転移を切除可能まで縮小し、切除する方法、また、肝転移切除後の全身化学療法、動注療法の併用方法、薬剤の投与方法について様々な検討試験が行われています。
 医療費から見た化学療法について、動注治療 約3000円/月  分子標的薬 約15万〜25万円/月かかります(3割の自己負担)。 動注療法を組み合わせることで医療費抑制に貢献できると考えます。
肝動注治療は全身化学療法に対しては、新規抗がん剤との併用によって予後はさらに改善されるのではないかとい う動きが盛んに行われています。また、切除術などの外科治療にはコンバージョンセラピー、あるいは肝切除後の補助化学療法という形で肝動注治療を組みわせるといいのではないかと、盛んに行われています また、高騰する医療費の削減ためにも 考慮すべきではないかと考えます。
 適切なカテーテル留置と動注システム管理の技術、これがなければ動注治療の最大のパフォーマンスは得られないと考えます。

                                        戻る